そうじの時間になりました。

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 ***  他の男子達は、本気で気分が乗ったのか意地を張ったのか。逃げるなよマジで見せろよ!と言いながら本当に真面目に掃除をやった。教室の掃き掃除から雑巾かけ、トイレ掃除までいつもとは打って変わってそりゃもうピッカピカである。  問題は俺で。まさか麻土香が本気にするとは思っていなくて、掃除をやりながらずっとどこかで上の空だったのだった。麻土香はあまりスカートを履く女の子ではなく、今日も短パンで学校に来ていた。つまり、パンツを見せるためにはズボンをズリ下げないといけないのである。あの真面目な美少女が、自分達の目の前でズボンを下げる。それを想像しただけで、中身のパンツどうこう以前に鼻血が出そうな有様だった。変態と言われても仕方ない。ちょっと本気でドキドキしていたのだから。  パンツなんて見せる予定、彼女もなかっただろうし。下手をしたらキャラクターのアップリケがついた子供パンツかもしれない。あるいはアネキが履いているような、大人びたレースのパンツなんだろうか。  正直に言おう。自分で約束させたくせに、そんなことばっかり考えて確実に作業はおろそかになっていたのである。やる気を出していた他の男子達にやや心配されてしまうくらいには。  で、その結果どうなったかと言えば。  女子達が先生に告げ口して、俺と俺の友人数名はこっぴどく叱られた。職員室に連行され、一時間みっちりお説教の刑である。結果、彼女のパンツを拝むようなことはなかった。いや、ほんと実行されなくて良かったとやや本気で思ったものだけれど。  驚いたのは。職員室からぐったりして出てきて帰ろうとした俺のことを、麻土香が下駄箱で待っていたことだ。 「あんたに言いたいことあるんだけど!」  あ、これは本気で怒っているやつ。  冷や汗をかく俺を、友達数人はあっさり見捨てた。先に帰るなー、とと平然と走り去っていく始末。友達ってなんだっけ、とちょっとしょっぱい気持ちになったのはここだけの話。それくらい、麻土香は初めてみるような怖い顔をしていたのだった。  正直この段階まで来ると、他の友達はどうか知らないが俺はそこそこ反省していたので、大人しく麻土香からの説教第二弾を受ける気になっていたのである。校庭の隅の鉄棒のあたり、少し人気が少ないところまで来たところで彼女にはっきり言われた。 「あんたバッカじゃないの?」  いや、ごもっともです、と言うしかない。  麻土香のパンツ、と思って本当にあれから何も手につかなかったのだ。自分で自分の首を絞めるようなことをしていたら世話ないのである。
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