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 夕方、帰り途中に、猫の元へ寄り道したら、 春夫が先に猫を撫ぜていた。 「俺、ご飯持ってきたんだけど、食べないんだよ。 どうしてだろう?具合悪いのかな?」 猫を覗き込むため体を屈ませると、自動販売機の下の隙間に、 何かが隠すように置いてあるのが見えた。 引っ張り出してみると、皿と猫用のドライフードの袋だ。 「あれ?皿が汚れている。 誰かが、このお皿で、この子にご飯あげているんだわ。」 この猫を何とか助けようと動いている人間が、 少なくとも、もう一人いる。 それを知って、私は心強く感じたが、どこの誰やも知れない人を 当てにする気にはなれなかった。 「もう少し、待っててね。 今、お前の暮らす部屋を作っているからね。」 猫を撫ぜてやると、ゴロゴロと喉を鳴らした。 その顔は、目ヤニと鼻水だらけだった。
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