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夕方、この日はことさら寒い。
私は、事前に勤め先で段ボールを貰い、
その中にビニールシートを張って、
私が着ていたフリースを詰めて、虎子の寝床を作った。
私はそれを抱えて、虎子のもとへ向かった。
「虎子。虎子。」
呼んでも来ない。
こんな事は、初めてだ。
嫌な予感が過る。
急いで自動販売機の裏へ回ると、虎子が箱にすっぽり入っていた。
「あら?」
段ボールに、みっちりとはまっている。
虎子は鳴きながら、仕方なさそうに、のっそり箱から出て、
私の足へ体を擦り付けた。
箱の中をのぞくと、迷彩柄の毛布が敷かれている。
「また、先を越されたか。」
そう言ったが、私はまったく悔しくなかった。
虎子が、誰かに可愛がられているのが、嬉しかった。
「虎子、あったかいね。良かったね。」
私は、虎子に薬を飲ませてから、箱の中に抱いて入れてやった。
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