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クリスマスの早朝、
まだ人気も工事の音もしない。
風の音だけがかすめて行く。
見渡す限り、建物はなく瓦礫だらけだ。
瓦礫だらけの静かな町は、
本当に死んだかのように、時からも取り残されているみたいだった。
「春さん、貴方は帰って、出る用意をしなよ。」
「いや、でも・・・虎子ちゃんが。」
だったら、行かないで。
今更、私や猫達を置いて、行くなんて酷いよ。
ずっと、ずっと、見守ってきた。
春夫が、いつか、心から笑える日が来ることを願って、
私は、ずっとこの男と暮らしていくと決めていたのに。
私は、そう叫んでやろうと思ったが、
その時、虎子のガラガラ声が聞こえた気がして、
春夫をその場に残して声のする方へ走った。
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