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もう一人の人間が、少しずれた時間軸の中で、
私と同じように、猫をトラコと呼んでいた。
同じように思い、同じように撫ぜ、
きっと同じ人に叱られていたという訳だ。
そして私は、最後まで、その誰かに先を越された。
考えてみれば、クリスマスプレゼントは、
クリスマスの日ではなく、
クリスマスイブの夜に、こっそりと置くものだ。
虎子にはその人の温かな腕を、その人には虎子を
クリスマスイブの夜、こっそりと贈られた。
「でも、サンタクロースは私には何もくれないわけ?」
私は、そんな事を考えながら、家へ向かって歩き出した。
涙はすっかり乾いていた。
家に帰ったら、春夫に伝えよう。
夢を掴むために、行ってこい!
私は、笑顔でそう伝えたくなった。
この数日間、私は春夫の事で悩んでいる暇なんてなかった。
それどころか、今の私は、笑顔で春夫を送り出せる。
そんな気持ちになっている。
だったら、これが私へのプレゼントなのかもしれない。
「ただねぇ、せっかく作った個室、どうしよっかなぁ。」
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