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朝、春夫はまだ寝ていたが、私は猫のもとへ ウェットフードを持って出かけた。 昨夜と同じように、自動販売機の陰から駆け寄ってくる。 「今日は、お皿も水も持ってきたよ。」 辺りは瓦礫が積まれた空き地ばかりだが、 自動販売機のある、この場所はアパートだった。 瓦礫の中には、住民が残して行った家具などもある。 その中に、猫用のトイレを見つけた。 「お前、置いて行かれたんだな。」 こんな懐っこい、しかも老猫を置いて行った人間がいる。 それを思うと、胸が張り裂けそうになった。 そして、私も、もうすぐ、春夫から置いて行かれる。 25日クリスマスの日に、春夫は遠い所へ行ってしまう。 この猫と自分が重なる。
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