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しばらく猫を撫ぜていると、白いワンボックスカーが
アパート跡地に停車した。
様子を伺っていると、車から降りた作業服の男が近づいてくる。
私は、叱られるかもしれないと、身を固くした。
「その猫、ずっとここにいるんですよ。
まったく、動こうとしないし、すごく懐っこいから可哀想で。
でも、車や重機が動くから、轢かれないか心配なんです。
どうして動かないんでしょうかね?」
待っているんだ。
この猫は、瓦礫になったアパートの前で、
飼い主を信じて待っている。
私は、そう確信した。
そして、やり場のない怒りが込み上げてきた。
「あの、私、この猫を保護したいです。
でも、まだ準備が出来ていないんです。
それまで、ここで餌やりをしてもいいでしょうか?」
私は、勢いで言ってしまった。
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