エピローグ:イロトリドリノセカイ

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 数日後、教授に頼まれた書類を届けに事務棟に行くと、学生課の窓口に蘇芳が立っていた。 声を掛けようかとも思ったが、おれは正式な学籍を持っていないため、なんとなく学生課には近寄りづらい。とりあえず自分の用事を済ませるために、学生課とは逆の方向にあるカウンターに向かった。 用事を終えて振り返ると、蘇芳はまだそこに立っていて、窓口に立つ事務員となにかを話したあと、数枚の書類を受け取った。  どうやらそれで用は済んだらしいのだが、おれの知る限りここではスクールサポートなどの大学経由のバイト斡旋や、実習の手続き、就職相談……あとは単位に関わる論文提出などの手続きが主にされているはずだし、そのうちのどれも今の蘇芳には関係がなさそうなので少し不思議に感じた。なんとなく首を傾げながらその姿を眺めていると、こちらを振り返った蘇芳が財布に学生証をしまいながら歩いてきた。 「どうも」 当たり前のようにそう言って、蘇芳はおれの隣に並んで歩き出す。思えば最初はこいつが視界に入るだけでもびくびくしていたのに、この距離感にもすっかり慣れたなとなんだかしみじみとしてしまった。「おう」と答えながら蘇芳の手元を見やると、まだ真新しい学生証が目に映る。 「なぁ、それって学生証だよな。ちょっと見せて」 「……? 別にいいですけど」 蘇芳は不思議そうな顔をしたが、財布から学生証を取り出して差し出した。しっかりめのプラスチックのカード。学部によってラインの色が違い、蘇芳の所属する文学部は落ち着いた紺色だ。おれは学生証は持っていないけど、恭介のカードはたしか緑色のラインだった気がする。
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