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さっきまで真剣に剣を交えていた人達と整列する心の内は、本当はまだ複雑だ。
半分以上の人間が『何であいつが…』と思いながら俺を見ている気がする。
ぎゅっと拳を握り締めた時、名前が呼ばれた。
返事をし、前に出て軽く頭を下げる。
正面で俺の名が読み上げられ、差し出された賞状を受け取った瞬間、
思いがけない大きな拍手と―――
「吉野ーッ! 優勝おめでとー!!」
山崎の声だ!
「先輩、サイコー!!」
「めっちゃカッコいいー!」
賞状を手に頭を下げる俺の耳に、渡辺達の叫び声も聞こえる。
それに呼応するように、再び会場一杯に拍手と声援が起こった。
この祝福が、自分だけに贈られているなんて、信じられない!!
背後からの温かく惜しみない拍手に、全身総毛立つような高揚感に満たされて顔を上げ、振り向いて、戦ってきた選手達を……そして、二階席を仰ぎ見た。
まだ沢山の人が残っている。
その人達に手を振って応えかけ、すんでの所で思い留まり、代わりに……深く、頭を下げた。
――――胸が……熱い。
『ありがとう、みんな……』
心の中でそう呟く。
俺の精一杯の感謝の気持ち、皆の心に届いただろうか?
俺こそ、西城の仲間に出会えた事の方が最高だ。
だけど、俺達の夏はまだ始まったばかりだ。
武道館の外では、これから先の熱い戦いを予感させるような眩しい太陽が、
西の空に高く、強く……光り輝いていた―――
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