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占い師の予言
私は勇者様と出会ってから、驚いてばかりいるような気がする。
が、しかし。この光景には、圧倒されずにいられない。
村では祭壇でしか見たことのなかった高級な白レンガの敷きつめられた美しい道。その両脇にも同じ白レンガで作られた大きな建築物が所狭しと立ち並んでいる。
建物の前にはいろいろな露店がだされており、なにもかも珍しい物ばかり。滅多にお目にかかることのない極上の食べ物を目玉に掲げている店が目立つが、中でも一際珍しいのは鼻行類の露店だ。ペットとして人気が高く、今ではなかなか手に入れることができないのに……
なによりも、大勢の種族たちがこんなに集まっているのは珍しい。人間から獣人、エルフもドワーフもホビットまで。まるで国中から集まって来たのではないかと言わんばかりの人混みだ。
「凄い!凄いですよ、勇者様!!」
興奮のあまり、大声をだしてしまう。勇者様はすぐ隣にいるのにこんな大声をだしてしまうなんて、少しはしゃぎ過ぎかもしれない。
と、横を向いてみると、ついさっきまで隣にいたはずの勇者様がいない。
いったい何処に!?
もしかして、はぐれてしまったのだろうか。こんな人集りの中じゃ、見つからないかもしれない。
焦って周囲を見回すと、案外すぐ近くに勇者様はいた。
数メートル離れた露店の前に屈みこみ、何やら店主に話しかけられているようだ。
「お兄さん!うちは絶対に当たるって噂の占いだよ!いやあ、お目が高い!」
【激安!百発百中トールの占い館】と書かれたいかにも手作りの幟を掲げた店だ。
あんまりにも嘘くさい……絶対にあれは、どう見ても絡まれている。というか、カモにされてる、よね?
「わたしの占いは百発百中!過去と未来が占えるのだ!さあ、占って進ぜよう。うぅ〜〜〜ん!」
「あ、あの〜……」
止めに入ろうとしたが、時すでに遅し。広げられた風呂敷の上には、2枚のカードが出されていた。
「貴方様はかなり奇妙な運命を背負っているようだ。こんな結果は、占い師をして初めてお目にかかる」
店主は場に出したカードを眺めながら、頭をボリボリとかいている。
「貴方様はどうやら、1度死んでいる」
その言葉に、ドキリとする。異世界から転生してきた勇者様は、前の世界で1度、死んでいるのだから。
私は固唾を呑んで、勇者様へと目をやった。彼は相変わらず無表情で、店主の顔を見やっていた。
「そして!」
店主は勇者様を指さすと、静かに言い放った。
「遠くない未来、もう1度、死ぬことになる」
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