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睡眠の重要性
目を覚ますと見えた光景は何時もの暗い部屋だった。
電気をつけ時計を見ると1時30分と表示してあった。ほとほと深い深いため息が出た。また、全然寝れなかった。
橋本雄也は睡眠障害を患っていた。
随分前から全く睡眠時間を確保できずに仕事に行き、昼休憩になると死んだように寝てしまい、そのまま起きれずにいて、上司に病院に行ってきた方がいいと言われ、言われるがままに病院に行きストレスによる睡眠障害と言われドクターストップを受け、会社を休職した。
そうして、橋本の睡眠治療が始まったのだが、投薬による睡眠薬での生活リズムの調整と運動を義務付けられたのだが、まるで効果が出ずにそのままズルズルと日付だけ経っていった。
「どうしたもんかねえ…」
橋本は暗い電灯だけの部屋の中で換気扇の前でタバコを吸っていた。
本当にこのままではマズイと思っていた。
日に日に増す昼夜逆転生活。橋本は見えない何かに追い詰められていた。
その時、橋本の唯一の癒しのペットのフェレットを見てみると、とてもぐっすりと幸せそうに眠っていた。
「よく寝れるねえ、床なんて硬いだろうに。なんでハンモックで寝ないのかねキミは」
と、言った直後に橋本に「…まさかな」と思う考えが浮かんだ。
ベッドの存在だ。狭い部屋に大きなベッドがあるせいで甘えが出ているのでは、と橋本は思った。
狭い部屋の中にベッドがあるから眠い時にすぐに寝れるから甘えが出ているのでは…とふと思った。
そう考えができると橋本は行動が恐ろしく早く、簡易設計のベッドなので解体も簡単で、深夜に橋本はベッドを解体してマットレスを立てかけて布団を押入れに入れた。
「こんなに広かったのか…俺の家」
ベッドが無くなり部屋がとても広くなり、そうして気がつくともう6時。
カーテンを開けると日光がさしていた。
久々に浴びた日光は橋本の眼球を通して脳内をまるで回し車のようにグルグル回して体内リズムを矯正した。
まるで極端な話に聞こえるだろうが、橋本はそのまま睡眠障害を克服してしまったのだ。
要因はベッド。そう、それだけなのだ。
橋本のような男には甘えを作ってはいけないのだった。
敷布団生活、これが橋本が橋本でいられる生活方式だったのだ。
ペットのフェレットに感謝して橋本はしばらくして仕事に復帰した。
人には合う合わない生活方式がある。十人十色、まさにそれなのだ。
橋本は自分に合っている生活を見つけられて、本日も元気に出社した。
眩しい日光を浴びながら。睡魔という影を消すように。
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