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あの日
1年前のあの日、メンターなんて面倒なものやりたくなくて朝から気が重かった。
体育館に集められた1、2年。
俺は2年だから1年のメンティーを取らなくてはいけない。
あちこちで早くもペアになったやつらが楽しそうにしているのを見ると、何がそんなに楽しいんだか、と思う。
先輩に俺もメンティーとして指導を受けた。
受けたけれど…あんなのは指導なんかじゃなかった。
影でこっそり殴られたり蹴られたり、罵倒されたり。
いい憂さ晴らしの対象でしかなかった。
そんな俺がメンティーを持つだって?
どう接したらいいのかも分からないのに?
ちゃんとした指導も受けていないのに?
鬱々とした気分の中、俺の前に立つ小さな存在に気が付いた。
震える身体。とぎれとぎれに聞こえる震える声。
――――なんだこの可愛い生き物は…。
犬塚太郎を初めて見た時の俺、如月優太が抱いた感想だった。
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