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犬塚太郎は不細工?
犬塚太郎は小さい頃から周りから『不細工』と冗談交じりに言われていた。
言った方は悪気はなく、どちらかと言えば親しみを込めた『ぶさかわ』のニュアンスを持つ『不細工』だった。
小さい背、丸顔に少し離れた目、低い鼻。普通とも言えない容姿に周りから言われる『不細工』という言葉。太郎自身も完全に自信を失っていった。
そんな事が長く続いて、辛くて悲しくて、
人が苦手になるのもしょうがない話だった。
そんな太郎も幼稚園の頃はおかっぱ頭の瞳の大きなすみれちゃんが好きだった。
「たろうくんぶちゃいくー」
思えばすみれちゃんが人生初の『不細工』発言者だったかもしれない。
それまでは両親から「かわいい、かわいい」「たろうはどうしてそんなにかわいいんだ」と可愛がられ、甘やかされて育った。
だから、最初は『不細工』の意味がわからなかった。
なんで自分が『不細工』と言われるのかも。
太郎は一日中泣いて、女の子が苦手になった。
そして小学校に上がり男の子と遊んでいると、
「犬塚って不細工だよなー」
一番仲がいいと思っていた櫂くんだった。
太郎は一日中泣いて、男の子が苦手になった。
それからは男の子も女の子も避けるようになり、なるべく顔を見られないように俯いて過ごす事が多くなった。
それでも聞こえてる『不細工』という言葉。
内容までは分からないが、ところどころに『不細工』という言葉と自分をあざ笑う声が聞こえた。
その頃には両親がいくら「かわいい」と言っても身内のひいき目としか受け取る事ができなくなっていた。
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