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メンター
太郎が通う高校には珍しく、メンター制度というものがあった。
それは、1,2年がペアになって学校生活の手助けをするというものだった。
朝の登校から始まって、学校内での過ごし方や勉強面、生活面でのサポート。
それは学年が1つ上がるまで続けられるのだ。
そうやって2年生は下級生を導き守る事で己を磨き、1年生は先輩を見習い次の年には自分が下級生を導き守るのだ。
太郎も1年の時には2年の先輩とペアを組んでいた。
先輩は一度も『不細工』とは言わなかったが、いつも難しい顔をしていて無理をしているのが分かり、太郎は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
体育館に集まった1,2年生。次々にペアが組まれていく。
あちこちから聞こえる「よろしく」「よろしくお願いします」の声。
嫌々ながらも自分を丁寧に導き助けてくれた先輩。太郎も同じだけ下級生に返したかった。
だけど……。
太郎の周りから人がどんどんいなくなっていく。
その日の朝頑張ろうと誓った太郎だったが、段々気持ちは萎れ完全に俯いてしまった。
そんな中突然聞こえてきたのは、
「先輩っ俺とペアになってくれませんか?」
という明るく元気な声だった。
最初は自分が話しかけられているとは思わなかった。
俯き続ける太郎の手をぎゅっと握り「先輩」と呼びかけられて初めて、自分に話しかけられていたのだと分かった。
顔を上げると、キラキラのイケメンが嬉しそうに微笑んでいた。
「あぁやっぱりだ。先輩って、昔飼ってた犬に似てます」
と、人懐っこい笑顔を見せたのは永作玲央。
―――犬?
太郎はきらきらと輝く玲央の笑顔が少しだけ怖かった。
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