43人が本棚に入れています
本棚に追加
閉じてしまった心
丁度1年前、太郎は2年生の如月優太と組んでいた。
如月がメンター(指導する方)で太郎はメンティー(指導を受ける方)だった。
今日のように体育館に集められた1年と2年。
次々と決まって行くペア。
太郎はまだ誰とも組んでいない。
不細工な自分と誰もペアを組んでくれない事に悲しくなった。
だけどこの学校において1,2年生でペアを絶対に組まなくてはいけなかった。
なけなしの勇気を振り絞って優しそうに見えた先輩の前に立った。
「あの……僕の…メンターに…な…なって…くれませんか…?」
俯き震える身体。
相手の顔を見る事ができない。
きっと困った顔をしているにちがいない。
嫌悪に歪んでいるかもしれない。
「いいよ」
聞こえてきたのはそんな簡潔な一言。
「え?」
信じられず顔を上げると、如月は少し赤い顔をしてふいっと顔を背けた。
あ…っと思った。
あぁ、そうか。誰ともペアを組めない僕を可哀そうに思って、嫌々引き受けてくれるんだ。
先輩は優しいなぁ。できるだけ迷惑かけないようにしないと。
「1年間、どうかよろしく、お願いしますっ」
慌ててお辞儀をした。
最初のコメントを投稿しよう!