閉じてしまった心

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閉じてしまった心

丁度1年前、太郎は2年生の如月優太(きさらぎゆうた)と組んでいた。 如月がメンター(指導する方)で太郎はメンティー(指導を受ける方)だった。 今日のように体育館に集められた1年と2年。 次々と決まって行くペア。 太郎はまだ誰とも組んでいない。 不細工な自分と誰もペアを組んでくれない事に悲しくなった。 だけどこの学校において1,2年生でペアを絶対に組まなくてはいけなかった。 なけなしの勇気を振り絞って優しそうに見えた先輩の前に立った。 「あの……僕の…メンターに…な…なって…くれませんか…?」 俯き震える身体。 相手の顔を見る事ができない。 きっと困った顔をしているにちがいない。 嫌悪に歪んでいるかもしれない。 「いいよ」 聞こえてきたのはそんな簡潔な一言。 「え?」 信じられず顔を上げると、如月は少し赤い顔をしてふいっと顔を背けた。 あ…っと思った。 あぁ、そうか。誰ともペアを組めない僕を可哀そうに思って、嫌々引き受けてくれるんだ。 先輩は優しいなぁ。できるだけ迷惑かけないようにしないと。 「1年間、どうかよろしく、お願いしますっ」 慌ててお辞儀をした。
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