商談のお供

18/30
前へ
/128ページ
次へ
「あれ、変なこと言いまし…た?よ、ね。すみません…」 「池澤さん」 「っはい」 返事の声が上ずってしまった。 「白河建商を使ってる施工業者ピックアップして。上位10軒」 「はいっ」 少し早口で指示を出されて、慌ててデータを照会する。 「…こんな感じです」 「なるほどな」 ノートパソコンを眞鍋さんの方へ向けるものの、まだ意図が読めず、小首を傾げる私に言葉を続けた。 「この施工業者に会って話を聞く。プロは半端なものは使わない。アポは月曜に取りつけて、半数から聞ければ十分だ」 「それで…?」 「説得力があるのはデータだ。でもそれだけでは弱い」 「生の声、ってことですね」 「当たり」 その後も資料作りは進み、大まかなものが大分出来上がってきた。数は5枚ほど。 「これで良さそうだな」 「そうですね…一段落つきました」 フーッと息をはく私に、眞鍋さんは眼鏡の位置を正して言った。 「安心するのはまだ早い。まぁ…、でも、助かった」
/128ページ

最初のコメントを投稿しよう!

244人が本棚に入れています
本棚に追加