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抱き寄せた力とは対照的に、優しく背中を撫でてくれる篤哉さん。
ぽんぽんと、まるで子供をあやすように。
大きな安心感に包まれて、頬を伝っていた涙はいつの間にか止まっていた。
「…ありがとうございました、送ってくれて」
「いや…おやすみ」
「おやすみなさい」
そう言ってドアを閉めかけた時、勢いよくドアが開いた。
「わっ…」
反動でトン、と篤哉さんの胸にぶつかる。
「忘れ物を思い出した」
(は…?)
首を傾げる私の頭をポンとしてつかつかと中に入って行く。
「ちょ、ちょっと…篤哉さん!?」
慌てて後を追いかけた。
「お前あの様子じゃ気が昂って寝れないだろ。泊まってやる」
ソファに悠然と座り足を組んで、とんでもない発言をされた。
「と、泊まるって言ったって…。大丈夫ですから!一人で寝れます!!」
ふーん、と口端を上げて顔を覗き込まれた。
「泣いてたくせにな?」
(うっ…)
さっきまでの優しさはどこへやら。
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