些細なはずの不調

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「はい?」 「池澤さん、かなり具合悪そうだから送ってやって。お前が一番家近いから」 周囲に話が漏れないように、トーンを抑えて話している。 「業務終わっただろ?」 頼むな、と匠海くんの肩をポンとして鷲宮主任はデスクに戻っていった。 ロッカールームから荷物を取り出して廊下に出ると、匠海くんが待ってくれていた。 「持とうか?」 「…平気」 「病人は素直に甘えた方が得だよ」 ひょい、と私の鞄を持ち上げ、階段をゆっくりと降りる。 「家まで持ちそう?」 「…どうかな」 と力なく笑うものの、実際、痛みがガンガン響いて、喋るのも億劫なほどにまでなっていた。 いつの間に呼んでいたのか、会社の前にはタクシーが停まっていた。 匠海くんは乗り込むなり、 「一番近いビジネスホテルにお願いします」 とドライバーさんに告げた。 通りを数分走るとホテル街に着き、そろそろとタクシーを降りた。
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