醐味拾い

胸の穴と醐味について

　お察しの通りですよ。胸の穴ってのはいわゆる、心の穴。醐味ってのは、抜け落ちた心の欠片(かけら)です。

　よく言うでしょう？『心にぽっかり穴があいた』って。まさにその通りなんです。人は大切な物を失うと心にぽっかりと穴があくんですよ。そして内へ内へと生命エネルギーが自身に吸われ、衰弱していく。それを修復するのが醐味拾いの仕事です。

　そうですね。心の欠片に醐味(ごみ)なんて名前は酷いかもしれませんね。でも霊媒師と名乗った方がなぜか世間はすんなり受け入れてくれるので、そう名乗っていましたから。醐味ってのは僕の頭の中でしか使っていなかった名称なんで。

　そう。醍醐味(だいごみ)の醐味から引用しました。なんとなくそれがしっくり来たからです。大それた意味はありません。

　胸の穴と醐味は物心ついた時から見えていました。なのでみんなそうだと思っていたんです。

　形も色も様々です。

　ええ。不思議な子って周囲には思われてたでしょうね。僕は無口な方なので幸い悪目立(わるめだ)ちはしませんでしたが。