無言電話

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 もう慣れてしまって気まずいとも感じなくなった無言電話が続く。  無言電話をしている間、通話をしていることなんて忘れているかのように私たちは別々の週末の夜を過ごす。  今日の彼は晩酌を、私はネイルオフを始めた。彼も私もよく話すタイプではないので、その間も無言電話となってしまう。  いつか時間の無駄にならないかと尋ねた時、それでもいいのだと彼は言った。1週間の疲れを、電話という形で私と繋がることによって癒しているのだと。  それを聞いて素直に嬉しかったし、彼がそれでいいなら私もそれで良かった。  冷静に考えてしまえば、きっとどうしようもなく無駄な時間。  それなのにどうしようもなく愛おしい。  カシュ、と電話の向こうでビールの缶が開く音がした。それからビールを飲み干す音と、「はぁー」という吐息。あとは時々、彼の咳払いや欠伸の音が聞こえてくる。  きっと彼の方には、除光液の瓶が机に置かれる音や、1年中花粉に悩まされている私の鼻をすする音なんかが聞こえているんだろう。  それだけなのに、不思議と多幸感が胸を満たしていく。
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