36

1/1
23人が本棚に入れています
本棚に追加
/53ページ

36

「だから、結婚なんてしねえって!」 「アキラ、いい加減にしろ!」 僕が襖の前に行くと、中からアキラさんの声が聞こえた。久しぶりに耳にする、アキラさんの声。 もう一人の声は、おそらくアキラさんのお父さんの声だろう。さっきの野太い声とよく似ている。 「私、アキラさんのこと、本気で好きですの」 今度は女性の声だ。ハキハキとした物言いと、甲高い声が圧迫感を感じさせる。 この人が…アキラさんの結婚相手? 「俺は好きじゃねえ!第一、お前は俺の何を知ってるわけ?」 アキラさんが反論する。その口調からしても、かなり苛立っているのがわかった。 「俺は、家とか、会社とか、そういうのに縛られずに、自由に生きていきたい。何回も言ってんだろ…」 だんだん、アキラさんの声が小さくなる。もう、何を言っても通用しないと諦めているように感じる。
/53ページ

最初のコメントを投稿しよう!