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「僕は、真ん中の中の真ん中みたいな男で、見た目も…こんな感じで、頭がいいわけでも、お金持ちでも、恋人がいるわけでもなくて。毎日、ただ生きていたんです。そんな時、アキラさんを見つけて、ここでアキラさんを助けたら、僕の人生、何かが変わるんじゃないかって思いました」 「ほらな、やっぱり何か欲があったんだろう?ここで大人しく出ていってくれるのなら、金をやらんわけでもないが」 アキラさんのお父さんは、鼻で僕を小馬鹿にしたように笑う。 「…お金なんかじゃありません。そんな、形でしかない幸せは、欲しくないんです。誰かがおはようって言ってくれて、家に帰ったら、ただいまって言ってくれる。そういう、目には見えないけど、でも、お金よりもっと大切なもの。僕は、それがほしかった」 アキラさんは、俯いたまま、僕の話を聞いている。顔を見たいけど、恥ずかしくて見れない。 「アキラさんは、それを全部くれた。僕の人生は、本当に潤ったんです。顔が平凡でも、頭が良くなくても、お金持ちじゃなくても、アキラさんがそばに居てくれたら、なにもいりません」 「…なにを馬鹿なことを」 偽善者めいた僕の言葉が、アキラさんのお父さんに響いたのかどうかはわからない。ただ、先ほどのような威勢は消えていると思った。 「だから、アキラさんを僕にください。僕の人生は豊かになるし、アキラさんは自由になれる。いい関係だと思いませんか」 何を言っているんだ僕は、と頭の中では叫んでいる。でも、それが声として僕の口からでることはなかった。出続けるのは、僕の心の奥にしまっていた感情。すなわち、それは、本音____? 「僕は、アキラさんが好きです」
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