41

1/1
前へ
/53ページ
次へ

41

ししおどしの、カランという音が響く。それくらい、この部屋には音がなかった。 全員が、僕の方をぽかんとした顔で見つめる。 アキラさんの結婚相手に関しては、上品のかけらもなく、口を半開きにしていた。 僕は今、なんて言った?? 反撃するように言葉を重ねて、何かとんでもないことを言ってしまったのだろうか。思い出そうとするが、数秒前のことなのに、頭がそれを堰き止める。 「……海斗?」 アキラさんの声で、はっと我に帰る。 僕はアキラさんが…… す_______? 全身の血の流れが早まったのがわかった。心臓の鼓動も早い。とてつもなく大きな音を立てて、僕の耳に聞こえてくる。背筋を、汗が伝う。鳥肌が、全身に浮かび上がる。 「君は、何を言って…?」 アキラさんのお父さんは、呆れたような顔をしていた。僕が何を言ったのか、うまく飲み込めていない様子だ。 この静かな、ある意味修羅場と化した状況を最初に打ち砕いたのは、それまでずっと口を半開きにしていた、アキラさんの結婚相手だった。
/53ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加