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それだけ言うと、彼女は僕の横を通り、襖を開けて部屋を出て行ってしまった。
慌ててご両親が追いかけるが、彼女の意思が固まった以上、これ以降お見合いを進めるのは困難だと予想された。
「……なんだ、この茶番劇は」
アキラさんのお父さんが声を漏らす。
「ふざけるな。どいつもこいつも、いい加減な事ばかりいいやがって。なにが愛だ。そんな、目に見えないものを信じて、何になる」
机を、ダン、と強く叩いた。そのまま、怒り狂った足取りで、部屋を出て行ってしまった。
残されたのは、僕と、アキラさん。
なんとなく気まずくて、僕はアキラさんと顔を合わせられない。このまま走って逃げてしまおうかと思った。
アキラさんが、すっと立ち上がる。
ああもし、このまま無言で部屋を出て行ってしまったら。僕は、一生後悔する。
ふざけたことを言ってしまったこと、アキラさんを救おうなんて考えたこと、そもそもあの日、家に入れたこと、その全てを。
僕の身長じゃ、アキラさんの顔を見る事はできない。
僕に、頭をあげる資格はなかった。
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