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「…海斗」
小さな声で、アキラさんは僕の名前を呼んだ。
僕も、はい、と壊れそうな声で返事をする。
めちゃくちゃにしてくれたな。
勝手な事いいやがって。
何が好きだ、偉そうに。
第一、男が男を好きなんて____。
いろんな言葉を考えた。実際にふりかかる言葉に、耐えられるように。予行練習は、必要だ。
だが実際、そんな練習は全て無意味になった。
アキラさんはなにも発しなかったからだ。
その代わりに、僕をぎゅっと抱きしめた。
温かい、アキラさんの体温。大きな、アキラさんの手、聞こえる、心臓の音。
「ありがとうな、海斗」
僕はその言葉で、この数週間堰き止めていた何かが崩れるのがわかった。
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