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「ここここ、こんなところ、住めませんよ!!!」
アキラさんが、マンションを購入した。
僕の大学に近い、それなりに立派なマンション。
の、最上階。
「いいからいいから。あのアパートだと、二人で暮らしていくのに不便でしょ?それに、ここは海斗の大学も近いし、なにより、見晴らしがいい」
いやいや、そんな理由で買っちゃいますか?!まったく、お金持ちの考えることはわからない……。
「海斗は、俺とここで暮らすの、いや?」
そう言って、可愛い声で言われると、嫌ですなんて言えない。
アキラさんは、僕が何に弱いか、しっかり理解している。その上で、僕が顔を真っ赤にするのを見て、楽しんでいるのだ。
「……もちろん、嬉しいですけど…」
「ならいいじゃん」
「でも、僕お金払えないですよ…」
「気にしなくっていいって。俺が勝手に買って、一緒に住むって言ってんだから。それに…」
「俺にとっては、海斗がそばに居てくれる方が嬉しいし?」
アキラさんは、やっぱりずるい。
「顔真っ赤だよ?だいじょうぶ?」
そう言って、覗き込むように顔を近づけてくる。
僕は完全に、アキラさんのペースに乗せられている。喜ぶのも悲しむのも照れるのも、全部アキラさんに支配されている。
でも、やっぱりアキラさんが好きで、支配されててもいいやなんて思ってしまう。
その笑顔が見れるなら。
その笑顔を独占できるなら。
僕だけのアキラさんに、なってくれるのなら。
アキラさんが笑う。
その胸元で、シルバーのネックレスが揺れた。
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