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九条さんが消えてしまった。
こんなことしている場合じゃないのに——。
「やめて……放してっ……」
「うるさい、猿轡もはめて欲しいのか?」
僕は征司の部屋に囚われている。
「いやってほど犯したでしょ……どうしてまたこんなことするのっ……」
手錠をかけられた両手が慣れた調子で頭上の鎖に繋がれ、僕の身体は人形のようにベッドに転がされた。
「あの人を追いかけないように?……そうでしょ?……そうなんでしょう?」
黙々と僕を繋ぎとめるこの男が今は本気で憎い。
「聞こえてるだろ……何とか言えよ……!こんな事までしなきゃ自信ないのかよ……なあ、征司っ……!んんっ……!!」
冷淡な眼差しが
無理やり塞がれた唇が
折れそうなほどに抱き締められた身体が――。
「あいつは出てった。もう行かせてやれ」
「やだっ……!馬鹿言うな……!」
征司は暴れる僕を組み敷くと
まるで善人気取りで言うんだ。
「行かせる……違うな。生きるの方だ——なあ、あいつを生かしてやれよ」
「生かせる……?」
「ああ、おまえに——いや俺たちに出会う前のような真人間として生かしてやるんだ。これが最後のチャンスだぞ?」
そして己に移植された彼の一部を摩る様にして囁く——。
「おまえのためにこんなことまでする男の——次は命まで取るか?」
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