episode 246

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「では、すぐにご用意いたしますのでこちらへ――」 チラリと階上の僕に目配せしながら中川は征司を食堂へと伴ってゆく。 「ナイスだ」 僕は親指を立てて上出来のサインを送る。 と――子供のように螺旋階段の手すりを滑り降り。 王様の背中を見送りながら、プラダの靴を掴んでそっと外へ飛び出した。 これが本当の敵前逃亡だ。 捕まったら何をされるか分からない。 靴を履く間もなく門へ向かう。 門を出たところでようやく片足をローファーに突っ込んでいると。 「よう、シンデレラ」 ちょうどいいところに――タクシーならぬ黒のジャガーが。 「椎名さん!」 「相変わらず可愛い顔して。靴も履かずにどうした?」 いいやこれは、魔法の馬車だ。 「お願い――王子様のところまで連れてって」 「はぁ?」 僕は有無を言わさず助手席側に回り込むと。 片手に靴を持ったまま、強引に身体を滑り込ませた。
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