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勇者パーティの部屋が汚すぎるので、リーダーがキレて魔法をぶっぱなしてるんですがどうしたらいいですか。
ちゅどーん!という爆発音。
ひぎゃー!という悲鳴。
ばりーん!と何かがガラスを突き破ってすっとんでいく音。
「……やべえ」
俺は真っ青になって、仲間二人と顔を見合わせていた。
ここは勇者パーティの仲間達と一緒になって借りているお屋敷である。この世界での“勇者”の仕事は魔王を倒すことではなく、未知のダンジョンに踏み入って特殊な鉱石やらキノコやらを発掘し、依頼先に届けるのがお仕事だ。モンスターを退治することもある。
基本的にメンバーは五人でひと組。
パーティで一つの屋敷やアパートを借りて、そこを拠点として冒険に出発する者が多い。自分達もまさにそのクチというわけだ。
剣士の俺、バイロン。
幻術士の少女、クレア。
白魔道士の男、チャーリー。
召喚士の女性、レイチェル。
そしてリーダーで黒魔道士の少年、ベンジャミンである。
男三人女二人のパーティで、喧嘩も時々するものの仲良く冒険をしてきた自分達だったのだが――年末が近づくにつれ、ピリピリとした空気が漂い始めていたのである。
そう、年末の大掃除が近づいてきたからだ。
黒魔道士でありリーダーであるベンジャミンが極端な綺麗好きであることは、既に皆も知っての通り。特に大掃除の時期になると彼は可愛い顔をしたとんでもない鬼と化すのである。
「……レイチェルの部屋、かなり酷い有様だったもんね。見た目お色気なお姉さんキャラなのに、汚部屋ぶりすごかったもんね……そりゃベンジャミンもキレるわー……」
はああ、とため息をついたクレア。
「魔法ぶっぱなしてお仕置きするレベルとなると、まあ当面は彼女の部屋でベンジャミンも足止めできるんでしょうけど。問題はその後よその後。まさか抜き打ちで今日大掃除始めるなんて思いもしなかったから、全く片付けとかしてないんですけど?」
「以下同文」
「右に同じ」
「どーすんべ、これ?俺、ベンジャミンの最大火力で丸焼けになるのも、窓の外にホームランするのも絶対嫌なんですが」
「そうよね。だからこう考えたわけ」
クレアはぽん、とチャーリーの肩を叩いて言った。
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