1

2/13
前へ
/41ページ
次へ
「前に伊豆半島に二週間いたよな」   竹屋は鍵をかけ、由之の母 信美に手渡した。一度ハンドバッグからスマホを取り出したが、思いとどまったように胸の前にあてたまま。僕と竹屋は顔を見合わせた。 「ごめんね、二人とも。付き合わせちゃって」 「いいえ。僕たちのことは」 グッと無理やり口角を上げた、不安を隠す仕草がやけに由之に似ていた。ビルの向こうには、オレンジ色の夕焼けが見えるんだろうか。くっきりと陰を作ったビルを見て、そんな事を思った。 その日から3日後、由之のマンションから程近い森林公園で、女性の遺体が発見された。
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加