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「前に伊豆半島に二週間いたよな」
竹屋は鍵をかけ、由之の母 信美に手渡した。一度ハンドバッグからスマホを取り出したが、思いとどまったように胸の前にあてたまま。僕と竹屋は顔を見合わせた。
「ごめんね、二人とも。付き合わせちゃって」
「いいえ。僕たちのことは」
グッと無理やり口角を上げた、不安を隠す仕草がやけに由之に似ていた。ビルの向こうには、オレンジ色の夕焼けが見えるんだろうか。くっきりと陰を作ったビルを見て、そんな事を思った。
その日から3日後、由之のマンションから程近い森林公園で、女性の遺体が発見された。
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