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「歩美、片付けて」 僕の足元に散らばる色とりどりの服やら肌着を片手で集めていく。歩美はソファに横たわり蒼白い顔をブランケットから覗かせた。 急にすくっと立ち上がったと思うと、口を大きく膨らませて僕を避けるように手で払う。トイレに駆け込み、ドアが力強く閉まった。それと同時に、えずく声がした。 「大丈夫?」 ドアの向こうでまだえずく声が聞こえる。しばらくして流す音がした。 歩美がドアをゆっくり開けて出てくる。胸をさすりながら。 「昨日、飲みすぎた」 「水…飲む?」 歩美の返事より先にコップに水を注ぐ。歩美は受け取って、一気に飲み干した。歩美は僕が起きている間には帰らず、真夜中から明け方にかけて帰ってきたようだ。 春の新入職員歓迎会で、酒にのまれたよう。毎年恒例で泥酔して帰ってくる。仕事ではいつもキビキビしていて近寄りがたい雰囲気を出しており、そのイメージを破壊するために こうして酒の力を借りている。 私生活ではだらしのない姿なのに、外では一切の隙を見せない。
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