1

4/13
前へ
/41ページ
次へ
「ねえ…友達見つかった?」 歩美は欠伸をしながら椅子に膝を立てて座る。僕は相変わらず歩美の脱ぎ散らかした服を集めて、両手に抱えながら洗濯機へ向かう。洗濯機に入れる前に、縮む素材はないか表示を確認しながら「いや」と返事した。 「ふうん」 「なに」 「誰にも何も言わないで姿を消すって、どんな気分なんだろうね」 歩美はリモコンを押してテレビをつける。色落ちしそうな赤いタイトスカートを手に取る。 「これ、手洗いなんだけど」 「洗濯機に入れてもいいよ」 「色落ちするよ」 「いいのいいの」 「困るよ。俺のシャツがピンクになるだろ」 歩美は声を上げて笑う。 歩美の質問に答えることはできない。由之の代弁なんて以ての外だ。彼は昔から変わり者。口数は少ないが、やることが大胆。女子のスカートを堂々とめくってみせたのも由之だけだ。
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加