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「ため息をついたのは自分の不甲斐なさにだよ。お前といると絶対とかずっととか、信じられなくなっていた気持ちが溢れてきて止められなくなる。自分が戸惑っているせいなのか、お前には全く伝わらないし、挙げ句に信用されていないと思うと焦る。」
前を向いたまま、青島は話し続けた。
「お前らしく隣にいて欲しいと思うのに、気持ちを押し付けて無理に笑顔を作らせて、余裕が無いよな。」
「そんな…。」
未来は前を見据える青島の横顔を見つめた。
その視線に気がついた青島は、未来に一瞬、視線を返してふっと笑った。
「続きは後だ。とりあえず、運転に集中させろ。」
「あぁ、ごめんなさい。」
青島が慎重に運転していることに気がついた未来が空を見上げると、白く小さな幾つもの光が、反射しながら舞い落ちる様子が見えた。
マンションの駐車場から部屋に移動する僅かな時間でも、凍えるほどの寒さだったが、部屋は既に暖房が効いて暖かくなっていて、未来はコートを脱いで窓辺に立つと散らつく雪を眺めた。
しばらくして着替えを済ませ寝室から出てきた青島は、そんな未来を後ろから抱きしめると、窓ガラスに映る物憂げな顔を見ながら言った。
「なまじ知っている仲だから、自分勝手にお互いの気持ちを推し量るのはやめよう。今までとは全く違う感情が生まれているんだから、ちゃんと二人で育てていこう。」
青島の言葉は、今夜の雪のように散らついている未来の不安を晴らしてくれるようで、しっかりと抱きしめてくれるその腕を、両手でぎゅっと掴んで言った。
「愛想を尽かされないように、頑張ります。」
「馬鹿。俺のセリフだよ。」
クスッと笑った未来は振り返り、初めて自分から青島の頬にキスをして、その胸に顔を埋めた。
「もう一度。」
そう言われて未来が見上げると、照れて嬉しそうに笑う、見たことのない青島の顔がそこにあった。
「ほっぺにキスしただけですよ?」
嬉しくて、自然と体が動いてしまっていた未来は、思いがけない青島の反応に驚いた。
「だから言っただろう?勝手に推し量るなって。何が嬉しくて何が不安になるかなんて、分かってないんだよ、お互い全く。」
あぁそうか、と未来は青島の頬に触れた。
「私は、育てていこうって言ってくれて嬉しかったです…、宏さん。」
言葉にすることで伝わる気持ちがある、それを仕事にしているというのに、そんなことに改めて気がつかされる。
不意に名前を呼ばれて、更に照れたように見える青島を愛おしく思いながら、未来は背伸びをすると、今度は唇を重ねた。
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