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気が利く美知さんと、のんびりした私とでは、差は歴然としていた。いずれ進退について話が来るのは私に違いない。しかし私だけ減らされるという想像は、私の気分を暗いものにした。
私はデスクで得意先への年賀状を書きながら、人が出払ったフロアで古参社員の藤村さんに愚痴をこぼした。
「ねえ藤村さん。年賀状も来年からやめるんですよね。どんどん仕事が減って、もう私さよならかも。この頃社員さんたちの視線も痛くて。藤村さんは、社長から何か聞いていませんか」
「俺が知るか。そんなことよりも、急げ」
藤村さんも、眉間にしわを寄せて年賀状をせっせと書いていた。この会社では、社員は毎年総出で年賀状に手書きの挨拶を書くのが恒例だった。
特に今回は、年賀状を取りやめる通知も兼ねていることもあり、広い範囲に出すよう社長から指示が出ていた。
年賀状は書かなくてはならないが、通常業務ももちろん行わなくてはならない。かかってきた電話にじりじりしながらも応対していると、ドアが開き、冷たい風が吹き込んだ。
「ただいま戻りました。年賀状は間に合いそうですか」
出張所の倉庫の棚卸に外出した美知さんが帰社したのだ。
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