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返事を待たずに部屋から出て行く美知さんを見送り、私は頭を掻きながら再び年賀状に向かった。
「私が行くんじゃ間に合わないって言いたいのかなあ。藤村さん、美知さんはね、この頃以前にも増して素早いんですよ。やっぱり美知さんも、心配なんですよね」
「何が」
「ほら、派遣や契約社員をばっさり切るっていう……」
藤村さんが、手に持った筆ペンの軸先でごりごりと頭を掻いた。
「あんたがさっきみたいに、さよならですなんてあちこちで騒ぐせいだろ。今は手を止めるな」
「別に私だけが騒いでるんじゃ……はあい」
私は年賀状に向き直り、筆ペンを手に取った。書くのは遅いが、字の上手さだけは美知さんに勝っている自信があった。
「あのう」
「なんだ」
「藤村さんは、どっちが残ればいいと思ってるんですか。私と、美知さんと」
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