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頭痛菌(ズツウキン)
著作 風と雲
プロローグ
頭痛(ずつう)とは……頭部に感じる痛みの内、表面痛でないものを差す。様々なタイプの痛みを含んだ幅の広い症状概念であるが、ありふれた症状である一方、これを主症状とする致命的疾患もあり、他方で原因が特定できない事も多い。(ウィキペディア参照)
第一章 覚醒
痛い、痛い、痛い、頭が痛い。
ズキズキする。痛い、助けてくれ。
ああああっ~痛む。たまらない。
何とかしてくれ、この痛みを……。
我慢できない。
吐き気がする。痛みが頭の中をかきむしるみたいだ。
止めてくれ、気が狂いそうだ。
助けて、助けて、誰か……僕を助けてくれ。
ハッと気がついた僕は、自分のベットから飛び起きていた。
薄暗い自室内。見慣れた感じがする。
けど……覚えがないんだ。なぜ、僕が……ここにいるのかも……解らない。
今、何時頃なのか。夜なのか、昼なのか。
壁時計をみるが……ぼやけて良く見えない。
ああ~、そうか。眼鏡をかけてないからだ。
「あれ……?」
何だか口の中で鉄の味がする。なんで……??
丸くて柔らかな物が口内で、ゴロゴロしているのだ。
噛めばすぐにつぶれそうなぐらい弱々しい感触。だが、不快な気分だ。
「何だ……」
僕は手元も良く見えない暗がりの中で、右手を口へと伸ばし、ヌルとした丸くて糸みたいな物を付けている異物を取り出してみた。
ぼやけた目に近かづけて行くと、赤くて白い部分があり、眉間を細めて……その物体の正体を凝視する。
「えっ……」
しばしの混乱。僕の血にまみれた右手が……ブルブルと震える。
「ギャアアアアアアアアア……」
思わず、目玉を放り出す僕は、ベットの後ろの壁に当たる。
ポトンと落ちた眼球は……こびりついている神経組織を振り、細かな血液を床に散りばめながら、部屋にある開いた扉へと転がって行った。
僕の胃が痙攣し、汚物を吐く。
「うっうううっ……何だよ、あれ……? どうなってんだ、一体……??」
怯える僕の目には、床の上に転がっていた眼球以外にも、大きな血痕が点在しているのが見えた。ベットの下から扉の向こう側まで、かなりの血があちらこちらに残っている。
僕の背筋に冷たい汗が流れる。
周りを見渡すと……その血の一部が自分の背後の壁へと分岐しているのを知る。僕はその跡を目で追う。べっとりついた血糊の後をだ。
「…………」
瞳を見開いて見つめる僕がいた。赤い血の大きな文字の並びを……。失われていた記憶の一部が……そこに記されていた。
『お前の名は、中山進だ』……と……。
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