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序章 神話と破滅
人間が生まれる遥か昔——女神セルフィールと男神ヘルダールが世界を創造した。
ヘルダールの強き咆哮が泥を固め大地を生み出し、勇ましき足を付けて踏み鳴らせば山脈が生まれた。荒々しい大地にセルフィールが愛を注ぐと生き物や植物が芽吹き、涙を流せば海や川が大地の窪みに流れ込んだ。そして彼女の吐息が風となり大地を撫で、太陽のように赤い髪の毛を櫛で梳かせば、抜けた毛から神々が生まれた。
ヴァルカと呼ばれる神々は楽園から人間に祝福を与えていた。ヴァルカの中でも一番気性の荒いホルド神は、不死鳥から炎を盗み、人間に与えてしまった。忽ち人間はその炎を自在に操り始め、鍛冶の神ヘンボに引け劣らない技術を生み出した。
だが、人間はその炎を使い、武器を作り、戦争を始めた。
激怒したヘルダールはホルドを霊峰シルヴィールの山頂に繋ぎ止め、永遠の苦痛を与えた。皮膚を刺す冷たい吹雪に苦しめられ、氷の獣がその肉に噛み付き、鷲達に目を啄まれていた。
彼は凍える中で復讐と言う熱い炎を燃やした。爆ぜる炎から飛び散った火の粉が近くの岩に燃え移ると、恐ろしい魔獣ヴルが生まれた。ヴルが鎖を噛み付くと牙はドロドロとそれを溶かしていき、遂にホルドは自由の身となってしまった。
解き放たれたホルドが地に向かって咆哮を迸らせると地面が割れ、裂け目から地獄の亡者共が溢れ出した。数十万にも上る亡者の群れを率いて神々の楽園——オルニュスへと攻め込んだ。その際ヘルダールに対して不満を持っていた神がホルドに寝返り、戦争が起きた。
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