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第二話
そのにゃんこの眼をみつめていると吸い込まれそうだ。
何故かこのままじっと見詰めていたいと思った。
今までの人生でこんなに、にゃんこと対峙したことないよ。
やたらに綺麗だと思う。
どれくらいそうしていたのか……
「こら!!タケシ!!音小さくなさい。御近所に迷惑でしょお!!」
オカンの怒鳴り声でハッとした。
すると何もしてないのに
勝手にオーディオのボリュウームが下った。
キィイイ………
部屋のドアが勝手に少し開いた。
にゃんこはトコトコ歩いてドアそばから、
「すみません~ボク友達です。ボクの持って来たCDです。ごめんなさい。お母さま」
と、にゃんこが喋った。
「まあ。お友達!?ほんとう!!仲良くしてあげてねえ。もうカルキャー教室行くけど。夕ご飯冷蔵庫だから。おやつもあるから。よろしくね」
階段の下から怒鳴るようにオカンの嬉しそうな声がする。
こっちは床に尻をついて両腕をガタガタ動かし後退りした。
だって目の前のネコが喋ったんだもの。
夢?夢?夢?!
「心配、無い無い。僕は『にゃんこ隊長』みんなそう呼ぶ。君に会いに来たんだ」
「オ。オレ?これ夢?それともなんかのロボットAIの?」
前脚で耳の裏を掻き出した。
ーーーねこじゃん。
「違う。ねこじゃないよ。僕は君にある力を与えた。それを有効に使って欲しい」
「え?」
「君が選ばれた。抽選で君に当った」
「つ、つまり。オレってオレって特別!?選ばれし者!?ヒーローってわけかあ」
「まあ。そうともとれる」
「抽選て。福引みたいな?」
「ちょっと違う。ユニバーサルな関係で」
前脚をぺろぺろピンクの舌で舐め出した。
ーーーねこじゃん。
「違う。ただのネコに見えるだけ。よく聞け若人。明日与えた威力を試すのだ。よいな」
「ほんもの?オレの考えてることが解るの?!」
「ほんものだ。それとも。この権利を次点の者に譲渡したいか?」
「ううん!いや、はい!にゃんこ隊長。
にゃんこ隊長はオレの思考を読むのですね。信じます。信じます!」
「まあ。そういうことだ。これから当分よろしくにゃん」
オレは現実を受け止めるのが超・早い。毎日毎日ファンタジーな二次元世界に浸りきっていたから。
ご飯に鰹節かけたのは食べてもらえなかった。
オレはオカンの不味いビーフシチューを掻き込みながらにゃんこ隊長の喰いっぷりに感心した。
昨晩、買って来たロールケーキを五分もぺろぺろ舐めていたのを一気に三口で平らげた。
やべえ。目じりに泪。
誰かと一緒にメシ食うなんて何年ぶりだろ。
食い終わるとにゃんこ隊長はポンとベッドの枕に飛び乗って
すうすう寝息をたてて眠ってしまった。
まるまってる。
ーーーねこじゃん。
転勤族のオトンとオカンとオレは日本列島を縦断してきた。
言ってないのは北海道と沖縄くらいだ。
どこへいっても「よそ者」から入る。
それでも小さい時はだま良かった。子供なんて直ぐにくっつく。
でも小学校中学年にもなると段々きつくなった。
仲間外れにされたり、イジメられた。
もうそれが嫌で存在感をできるだけ薄めた。
その場の空気を察知して次の一手を考えて即行動する。
中一の秋、ドッジボールの試合で最後までオレはコートに残った。
先生のホイッスルが鳴った。
全く無色透明に近い存在感で
コートにまだ残っている俺に誰も気づかないで試合は終わった。
試合が終わったときオレも終わった気がした。
普通の公立の中学に入ってもう高校までは転勤しないとなった。
でも学校はダイキライになっていつの間にか行かない日々が続いた。
いまは部屋に閉じこもって暮らしている。
地球の回転軸と軸がズレてる両親は
意外に息子のそんな生活を赦している。
次の日、
にゃんこ隊長に導かれ着いた先は
昨日コミックを買ったコンビニの前でがっかりした。
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