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第4話
次の日。
オレは久しぶりに登校した。
階段を降りると、
食卓に居たオカンとオトンはドッキリが解った時の芸人の顔になった。
「あんたどこ行くの?制服なんか着て!!」
「どっか悪いのか?」
脱力夫婦だ。
「学校だよ。見ればわかるだろ。元気だよ」
久しぶりに登校しようと思ったのは勿論、この力を振るいたいからだ。
思いっきり復讐してやる!!真鍋徹の奴をよお
クラスの鬼ボス真鍋徹。
アイツの欠点とか弱みを握ってやる。
そこから切り崩して………ああ。オレって最低~でもいいだろそれ位。
下駄箱で上履きにはきかえていたら、同じクラスの斎藤久嗣が話しかけて来た。
「病気。治ったの?良かったね」キラリと白い歯が光る。
クラス一のイケメンだ。背も高い、勉強もスポーツも出来る。
ある意味真鍋よりムカつく存在だともいえるだろう。
おまけに家が病院経営で医師の家系って出来すぎじゃん。
アニメの設定キャラかよ。髪の毛がグレーだし。
それは地毛らしいけど。
マジでこの学校で一番輝いているプリンス的存在だ。
一緒に廊下歩いてると通り過ぎる女子が二度見するか赤くなって下を向く。
「ねえ。修学旅行だけど話聞いてる?ふたつのルートに別れるらしいよ。
もう決めた?僕は北海道にしようと思って。
君は日本中行った事あるんだろう?どう?北海道は」
「うーん。北海道と沖縄以外はみんな行った。北海道は知らない」
「そう!じゃあ。僕たちのグループに入らない?一緒に楽しもうよ」
ニコニコ笑顔だ。
ーーーまあ。結構いいやつなんだな。一生懸命気ぃ使ってくれてんだろう
「ああ。考えとく」
窓際の一番後ろの席に座った。
オレが久しぶりに登校したのに気づいたのは斎藤だけだった。
まあ。そんな事はいい。
真鍋だ!
この一限目の国語の時間にアイツに意識を集中させるんだぜ……
がっしり体格で丸刈り坊主。
真鍋徹は二年で野球部のエースだ。
相変わらずへらへらしてる。
授業は上の空だ。
白い霧が出て来た。
来る。
来るぞ。
―ーーーEntier!!
ううう……うう??
見えるのは真鍋が自分の部屋らしきところで寝ころんでる。
菓子の袋だの。転がったカラのペットボトルだの。丸めたティッシュだの。汚い部屋だ。むっと汗の臭いまでする。エロ本山積みになっている。
写真を見てる。
何枚もあるのを交互に。
にやにやしてる。
スマホの時代にスナップ写真か。
何がそんなに楽しいんだあ?
成程!
写真は全部保健室の桜田門凛子先生だ。
エロカッコいいもんなあ。長い黒髪にあの赤い縁のあの眼鏡。
ミニのタイトスカートに白衣。
エナメルのハイヒールが似合い過ぎる。
へえ。
どうやって手に入れたんだか先生の私服姿の写真まである。
えええ~
なんでバスタオル巻いてるのまであるんだああ??
オレもオレもそれ焼き増ししてくれ。
エロいィィィーーー
うっ。
鼻から血が出て来た。
「すみません。保健室行って来ます」
手をあげてせんこーのお許しなど待たずに教室を出た。
「待った。オレ保健係。一緒に行こうよ」
なんと真鍋まで教室を出て来てオレの肩に腕を回して来た。キモイ。
「おまえ。転校したんじゃなかったんだ。またイジメられに来たってかあ」
心の中で今に見てろよと闘志を燃やした。
保健室につくと先生は訝しそうに俺たちを睨んだ。
顔に『サボりに来たのか』と書いてある。
真鍋が「あの。鼻血が出てコイツ」
オレをバンと前に突き出した。
「ではかけて。君は帰りなさい。授業でしょう」
オレは椅子に腰かけ上半身を揺らした。
「ああ、い、いえ。せんせいーなんかふらふらするので真鍋君にいてもらっていいですかあ」
しょうがないわねと鼻血の止血手当を始めてくれた。
後ろで真鍋がオレに感謝しているのが解る。
オレは先生に集中した。
ああ………ほんとに。この力。凄いよなあ。
桜田門先生の意中の人物が目の前に現れた。白い霧の中からプリンスが登場したんだ。それも速攻という事は相当に好きなんだ。
ああ……いけない場面が次々出てくる。
あんなことも。こんなことも。
先生の頭の中の妄想までが次々と場面展開してゆく。
ーーー斎藤久嗣ーーー今日、オレに一緒に旅行しようと誘ってくれたイケメン。
モテモテ同士かあ。
先生と生徒かあ。
ああ……!!めくるめくアダルトな画面が襲ってくる。
オレは鼻血を吹き出して失神した。
気づいた時はベッドに寝ていた。
腹の上に乗っていたにゃんこ隊長が「どうだ?楽しかったか?」
「へい」
まだ鼻に綿が入っていた。
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