エピソードゼロ 再会編

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 夏を向かえ、リースには厳しい季節となったが、環もまた、暑さによって体調を崩すといけないということで、二人は日の出ている間だけ、影となる涼しい部屋に避難して過ごした。  どこでどう知ったのか、人の心を読める不思議な少女、ふみがリースの家にやって来るようになった。  久しぶりに会いに来たふみに、リースと環は「久しぶりね」と言うと、ふみは「私にはわかっていたから。お姉ちゃんが夏前に戻ってくることが」とまた、二人を驚かす事を言った。  それからは三人で過ごすことも多くなった。  環の病状も良くなり、新しく主治医になった先生も驚くほどだった。 「環・・・、明日か明後日に、環の実家に顔を出してこようと思う・・・。これは、君が望めばだけども・・・」  そのリースの前ふりの言葉は、昼間、ふみに言われた一言が発端だった。 『お姉ちゃん、待っているよ。リースからの結婚しようって言葉』  結婚という言葉は知っていても、自分達には関係の無い言葉だと思っていた。しかし、二人の愛の形の最終地点が結婚となるなら、確かに伝えるべきだとリースも考えていた。 「結婚・・・、しようか?」 「リース・・・、本気なの?」 「あぁ・・・。この先もずっと、君と二人で暮らしたいからさ」  環は目に涙が自然と溢れだしながら、小さく「うん」と頷いた。  リースは、まだ完治していない環を家に残して、一人で環の実家のある新潟へ向かった。勿論、環の病状の報告と、結婚したいという二人の意思を伝えるために。  夏の終わりの事だった。 
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