第02章① : 備考 - 幸子

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 そして、もう1つの準備。  それは、もっと彼が望む様な彼女になる事。  実際は、そっちの準備の方が全く出来ていない。  前回の日記に書き忘れてしまったけど、私は絶対に彼が望む彼女になってあげる。そもそも、今までもそうだった。彼が好きな髪の長さにして、彼がユニクロが好きだから私も全身ユニクロ。下着なんて楽過ぎて笑えちゃう程に、良い仕事をしてくれている。  そして、彼が好きなご飯を作って、彼が好きな飲み物を準備して。彼が好きな音楽を聴いて、彼が好きな色を好きになって。  彼の口癖を真似て、彼と同じ歩幅で歩いて、彼と同じスマホを持って、彼と同じ数のピアスを開けて。  私は彼に、彼の色に染まっていくの。  でも、きっとまだ足りないんだと思う……。  だから彼は私じゃない、他の女に目が行ってしまったんだと思う。  彼の責任じゃないの。きっと私の責任。  私が足りないから……。  ごめんね。  ごめんなさい。  ねぇ?  私に何が足りないの?  教えてよ……。  本当は、残業のせいでもないし、彼に気まずくて会えないんじゃないの。  ただ怖いの。  毎日、毎日。夜になるのが怖いの。初めて見た、いつもと雰囲気が違う彼に触れられたこの部屋に1人で居る事が怖いの。  でも、彼に会う勇気すらもないの。  
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