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第01章① : 疑惑 - 幸子
05月05日
唐突だけど、今日から日記を書いていこうと思う。理由は簡単。簡単だけど私にとっては重大なニュース。事件。最早これは事変と呼んでも良いのかもしれない。
しかも、今日は彼と付き合ってからの1年記念日。新卒で広告代理店に同期入社した去年。同じチームに配属されて、1ケ月が経過したゴールデンウイークに、私は人生で初めて告白された。
「幸子(さちこ)さんを好きになりました。付き合って下さい」
緊張した彼にそう言われた私は、ビックリしてしまい泣いてしまったのを忘れられない。まさか自分が告白されるなんて……。こんなに地味で勉強しかしてこなかった私。流行りとか、女子力とか。憧れはあっても見ない振りをして生きてきた私。そんな私が誰かに告白されるなんて、ビックリ以外の何ものでもなかった。
泣いた私を見て、彼はおどおどしたまま頭を掻いていた。困った事があると、頭を掻く癖がある人なんだと。今思えば初めて目の当たりにした瞬間だった。
泣き止んだ私は小さく返事をした。
「私で良ければ宜しくお願いします」
あれから1年。私は過去に恋愛経験がなく、彼は1人だけ彼女が居た事があると聞いた。そんな2人が最初の頃にしてたデートは公園のベンチで話すだけ。高校生のデートですら、もっとオシャレなデートをするとは思ってはいたけれど、なんとなく波長が合う彼との時間が、ただただ幸せだった。勿論、今も幸せ。
彼は、顔はキレイなのに私と同じでオシャレとは疎遠な環境にいる人で、スーツなんて【〇〇点セットで〇〇円!】の様な物を買い、私服もユニクロで済ませてしまう。ブランド品はおろか、ブランド名すら知らないタイプ。っと書いている私も同類だから、人の事は決して言えないのだけど。
ゆっくりと、ゆるやかに時間が流れた1年は、印象的な思い出はなかったけれど、とても幸せで充実した1年だった。
後々聞いた話だけれど、面接の時にも1度話したらしいけど私は緊張のせいか全く覚えていなかった。だから入社した初日から、彼が馴れ馴れしく話し掛けてきたのを納得出来た気がする。
そして1年記念日の今日。彼は1時間前まで私の部屋に来ていた。部屋で会う時の9割は私の部屋という比率で多い。こんな地味子ちゃんな私は、自分で言うのもおこがましいけれど料理が得意。得意っていうよりも、料理するのが好き。大好き。
私が10歳の頃に母が亡くなり、父と2人で去年の3月迄一緒に生活してきた。子供の頃に『お父さんのお手伝いしなきゃ』って気持ちが強くて、料理と洗濯は私が担当してきたせいか、料理をしている時が昔から好きだった。
それくらいしか取り柄がない私は、こんな私の彼で居てくれる感謝の気持ちとして、手料理を良く作っている。自分が使っているキッチン用品の方が慣れている分、上手に出来る気がしてお家デートは私の部屋が多い。
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