虹の扉の向こう側

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 準備を済ませた俺は4時半頃に皆がまかないを食べている席に参加した。店の開店時間は5時半からだ。その前に30~40分位皆でまかないを食べながら休憩して、軽く今日のプランを確認して店を開ける。お昼は12時から14時半までランチ営業もしている為、店はこの時間にやっと一息つく頃で、皆そろってご飯を食べるというわけだ。 店長は従業員と一緒にご飯を食べる事はとても大切だと本場イタリアで教わったのだと言い、この時間をすごく愛している。  俺はこの店が好きだった。レストラン・ミラノは佐世保市の中心街と呼ばれる四ヵ町商店街から米軍キャンプが見える公園に行く途中の路地に位置している。少し中心街からは離れているものの、川沿いにあり周りは静かで日当たりが良く、ここだけ異国の空気が流れているようだった。近所のお客さんが頻繁に来てくれて、最近は地元のおしゃれ女子の間で人気が出てきているようで、店長自慢のパスタやドルチェはインスタ映えするらしく、良く若い女の子達が来て写真を撮っている。  店内もすごくこだわっていて、50席程のそれほど大きくないレストランの内装は赤レンガ造りで西洋式の暖炉があったり、テーブルやイス、デコレーションは全部西洋アンティークで揃えられていた。  店長のしょうじさんは、50歳手前の大柄の男性で20年前イタリア、ミラノに渡り、本場イタリアンのレストランで修業を積んだらしく彼の作る料理は確かにどれもこれも感動するおいしさだった。そして、何とも開けっ広げでオープンな性格で細かい事は全く気にしない、日本社会にある形式ばったものなどから遠くかけ離れたような存在だった。それが、東京の生活で疲れ切っていた俺にはとても心地よかった。
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