虹の扉の向こう側

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   まかないを食べ始めて、5分位したら店のドアが開き「おはようございます。」と言って、従業員のエミが入ってきた。俺を見るなり「あ、リュウ君、もう良くなったと?」と聞いてきた。  「うん、まあね。まだ病み上がりだけど。」と俺は答えた。  「そっか!!でも良かった。もう、先週末は忙しくて大変やったとよ。ね、店長!!」と言って彼女は店長の肩をバンバンと叩いた。  店長は「あ~、そういえばそうやったっけなぁ?」ともう覚えていないかのよなリアクションを取った。「そうじゃないですか!忘れないでくださいよー。」とエミは信じられないとばかりに店長を見ていた。  エミは俺より4歳年下で地元の服飾の専門学校を卒業してから就職せずにここでアルバイトをしている若い子だ。明るく茶色に染めた髪に色白で丸く大きな目が特徴的ないわゆる最近流行りの可愛い顔をしている女の子だった。もう、2年以上ここでアルバイトしていて、しっかり者でリーダー気質の彼女だったが、俺にはすごく幼く見えた。生まれてからずっとこの町にいてまだ世間をあまり知らない子だと思っていた。  「あぁ、エミちゃんそういえば今日から新しいサービスの人が来るから、トレーニングよろしくね。」と店長が唐突に言った。  「え、そうなんですか?いつの間に面接したんですか?知らなかったです。」とエミは言った。「うん、この前ちょっとね。エミちゃんよりうんとお姉さんやけどしっかりした人やから。」と店長は続けた。 「えー、年上の人かぁ。気使うなぁ。え、何歳ですか、その人?結婚してるんですか?子持ち?」とエミは立て続けに質問していた。  「子供はおるけど旦那さんはもう亡くなられとる方よ。歳は30代後半やったかな…?ま、初日やけんあんまそこら辺は深く聞くなよ。」と店長はエミに念押しをしていた。  「へぇー、子持ちかぁ。なんでランチ勤務じゃないんだろう?」などとブツブツ言いながら彼女は地下の更衣室に向かっていった。  俺は旦那さんと死別している子持ちの人が何故またここで仕事する事に?と思ったが深くは考えていなかった。その年代の人が時々アルバイトをしに来る事があるけど、あまり長く続くことは無かった。飲食店の立ち仕事はきついという事をイマイチ分かっていなく想像よりもはるかに多い仕事量についていけないことがほとんどだった。だから、俺は今回の人は長く続くかなぁ?と思っていた。
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