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第二章
まかないを食べ終わって、皆コーヒーやカプチーノを飲みながらくつろいでいた。俺は、ipadで今日の予約客の確認をしていた。10月の始めは特に忙しくなく、普段の平日の月曜日で今日はそれほど、こまないだろうと思っていた。
外の気温はまだ温かく出勤するときは24度ぐらいだった。ミラノには木造の洒落たテラス席があるが店長は「日本の人は外よりも中で食べたがるから。」とそろそろ片付けようかと言っていた。
休憩時間はあっという間に過ぎて、気付けば開店時間の15分程前になっていた。
その時、チリンチリンと鈴の音がなって店の扉が開いた。俺がドアの方に目をやると「こんにちは。」と見たことのない女の人が入ってきた。コーヒーを飲みながらくつろいでいた店長は「あぁ、ちかさん、こっち、こっち」と手招きして呼び寄せた。
その女性は店長の方に向かって歩いて来て、「どうも。」とぺこりとお辞儀をした。
俺は遠くのキッチンの入り口付近にいて良く見えなかったが、黒いつややかな髪の毛を後ろでしっかりと結わえ、スラリとした細い体に長い手足が印象的なのが分かった。
その女性は周りの従業員の皆にも笑顔で挨拶をしており、まだこちらには気づいていない様子だった。
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