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白雪と黒雪
高校に入れば何かが変わると思ったのに。
むしろ、自分の背の低さが際立って、とてもみじめだ。
「ひーめ、何ふてくされてんだよ」
机に突っ伏していると、中学の時からの友人の山田が声をかけてくる。
おれはじろりと見上げた。
「ひめって呼ぶなって言ってるだろっ!別にふてくされてねーし!」
ひめ、というのは中学の時のアダ名だ。
おれの名字が白雪だから、白雪姫でひめ。おれだって男だし、ひめなんて呼ばれても嬉しくない。
「まぁまぁ、そんな怒んなって。優しい騎士様が、ひめの分もパン買ってきたからさ」
そういって山田はヤキソバパンと牛乳をおれの前に置いた。
「サンキュ……」
山田はバカにしてはくるものの、結構いいヤツだ。
「いーってことよ。渚の身長じゃ、争奪戦に負けるしな」
本当に、バカにさえしてこなければ文句なしにいい奴なのになぁ!
しかし、負けてしまうことは事実だし、毎日欠かさずパンを買ってきてくれるので、おれは文句を飲み込んだ。
代わりに牛乳を勢いよく飲んだ。
「そんなに背伸ばしたいの?」
呆れたように山田が聞いてくる。おれは憎しみを込めてにらんだ。
「お前みたいに背高い奴にはわからないだろうけど、おれは背伸ばしてモテたいの!」
「うん、わかんない。でも別にそのままでよくね?割と女子人気高いし」
「今なんて?!」
山田の一言に、おれは勢いよく聞き返した。
女子人気が高い?!
「そーそー。かわいい~!って、よく言われてんぞ」
「なんだよ……」
おれはがっかりしてため息をついて、ヤキソバパンをかじった。
「え、不満なの?」
「女子が言う可愛いは、恋愛対象外ってことだもん。それに、おれにとってかわいいは誉め言葉じゃねーし……」
「そういうもんなのか?」
人の苦労も知らずに首をかしげる山田に腹が立った。
「そういうもんなの!」
おれは山田に言い返すと、ヤキソバパンに勢いよくかぶりついた。
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