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 どのくらい歩いただろう。ふと上の方に明かりが見えた。  明かりが古そうな建物の一部を照らしている。 (もしかして、あれが例の神社?)  辺りはかなり暗くなっていて、遠くまで見えにくいから本当にそうなのかは分からない。  5月だというのに、山は寒かった。昼間より気温も下がってきていて、体が冷えてきている。  もし目的の神社じゃなくても、とりあえずあの建物に入って休みたい。  明かりを頼りに、なんとかその建物の前に辿り着く。  建物の上部に額があり、『龍之山神社』と書かれていた。 「ここだ! やっと着いたぁ」 (私が地元の住民じゃないから、こんなに迷ったのね……)  拝殿らしき建物のガラス戸から奥を覗き込んでみた。  人の気配は無い。  試しにガラス戸に手を掛けて、横に引いてみた。  カラ……と軽い音がして戸が開く。鍵は掛かっていないようだった。  戸を開けて、顔だけ中に入れた。 「……すいませーん……」  おそるおそる奥に声を掛けたけど、返事は無い。  今度は大きめの声で奥に向かって呼びかける。 「すいませーん! 誰かいますかー!」  ……やっぱり返事は無い。
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