古傷の痛みと共に、呪いを贈ろう

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バキッ!!!! 俺の頬に、衝撃が走る。脳が少しばかり揺れた気がした。咄嗟の事で、急所から反らしてしまったのだろう。 目の前のお前は、あの時の目で俺を睨みつけていた。 「…ざ、っけんじゃねぇよ!!!クソ野郎っ。どこまでも人をおちょくりやがって!!」 憎々しげにこちらを睨みつける瞳の、ギラギラとした輝き。俺の好きなあいつの瞳に、戻っている。 完全に思い出したようだ。 俺の事を。そして、どんな別れ方をしたのか。 キスで記憶が蘇るなんて、おとぎ話かよ。 現実は小説より奇なり、とはよく言ったものだな。 「お前は、どこまでも面白い女だな、紗知。」 「面白いのはあんたの方でしょ。噂になってるよ。女を遊んでは怪我させて捨ててるって。昔よりも女癖が酷いじゃん。何してんの?」 「俺がどこの誰と付き合おうが、お前には関係ねぇだろ。それとも、まだ俺に未練あんのか?」 自分で言っておきながら、何故か心が重くなった。いや、これは軽い脳震盪の影響だ。そう言い聞かせたが、こいつの顔を見ればそんな考えも消え去る。 「…逆に何で、無いと思える訳?」 「は…?」 「あぁ、私は猫か。飼いたがってたものね。ペットの代わりが私だったんでしょ?丁度良かったものね。でも、私はあんたのペットだと思った事は一度も無いわ。」 「おい。」 「短い間でも、あんたの退屈凌ぎに付き合わされただけだとしても、私にとっては…」 小さな声だった。聞き取るのもやっとだったその言葉に、俺は息を呑む。 「俺といて、幸せだったのか?」 俺は、悪くなかったぞ。 「俺を、本気で、愛していたのか?」 愛していたと言えよ。 「…煩い!!!」 紗知が動いた。あぁ、今も昔の足癖の悪さは、変わらないのか。 そんな呑気な事を考えていると、あいつの足が頭部に直撃する。 避けもせずに立ち尽くした為に、簡単に俺の意識はトんでしまい、気づけば紗知はどこにもいなかった。 何もない広い空き地に、夕焼けの光だけが落ちていた。
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