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「あ、浜口先輩も入ります?」
「え、いいの? 俺、百合果を送っただけなんだけど……」
「良いですよ。なんなら、夕飯も……」
「夕飯はまずくないか? 俺たちだけなら良いけど、マジで、山やん以外はビックリする。父さんも何言い出すかわからないし」
「あ、そっか……」
「ま、親たちが帰ってくる前なら問題ないだろ」
十和の言葉に私は頷く。折角来てもらって申し訳ないので、浜口先輩にもあがってもらった。
「何飲みますか?」
「あー、じゃあ、コーヒーを」
「ホットで良いですか?」
「あ、うん」
台所へ行って、客用のコーヒーカップを出した。
「美海、私はコーラ! 買ってるよね?」
「もちろん」
「いや、美海に頼まないで自分でやれよ」
「えー、じゃあ、兄ちゃんがやってよ」
全くいつもの調子の百合果は恥じらいを知らないのだろうか。十和にはあまりないけれど、剣崎さんの前だったら、私はきっと張り切ってできる女を演じている。
十和はため息をつきながら、立ち上がり、冷蔵庫から自分の分のお茶と500mlのコーラーを出した。そして、百合果の前にグラスとコーラーを置いた。自分の前にお茶を置く。
その光景に浜口先輩は驚いたらしく、十和をまじまじと見つめる。
「他人の冷蔵庫、そんな簡単に開けられるのか」
「……まさか。倉内家しかやらない。昔、いちいち断りながら取ってたら、煩わしいから勝手にしていいって山やんと美海の父親に言われた。うちも面倒だから、倉内家が坂根家来ても同じ」
そう十和が応えると、浜口先輩は感心したように「へぇー」と呟く。
「ほんと、家族で仲いいんだな」
「まあな」
お湯が沸いて、インスタントコーヒーを淹れる。私もついでにコーヒーにした。
「どうぞ」
「どうも」
ぺこりとすると浜口先輩は、コーヒーを自分のところに引き寄せた。
「……」
「……」
「……え、俺が百合果と付き合ってることは突っ込まないの?」
お茶を飲んで落ち着いている十和に、耐えきれなくなって浜口先輩が聞いた。
「俺が突っ込む話じゃない。このモンスターを受け入れる奴がこんな近くにいたのは驚いてるけど」
「モンスター……。いや、百合果、普通に可愛いけど」
「兄ちゃんに言っても無駄だよ。私は浜口さんにそう思われるだけで嬉しいから」
「そ、そう?」
……何を見せられているんだろう。
私がそう思うのだから、兄の十和は余計にそう思っているような気がする。
けれども、なんだか既視感があるような……。あ、樹里ちゃんと坂根さんだ。
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