十九章 理由

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「面倒だから学校で俺の妹と付き合ってるって言うなよ」 「重々承知してます」  浜口先輩は深々と頭を下げた。けれども、決して重たい空気ではなく、どちらかというと大袈裟にコミカルにやっている感じだ。十和もそれをわかってか、呑気にお茶を飲んでいる。 「お前はちゃんと受験に向けて勉強してるんだろうな?」 「もっちろーん。来週は仮内申前最後のテストだから、死に物狂いで勉強してる」  勉強とは何も関係ないのに、百合果は腕を曲げて力瘤を見せてきた。 「……あ、そう。じゃあ、今まで何してたんだよ」 「勉強教えてもらってた!! 遊んでないもん!!」  百合果はムッとすると、浜口先輩の袖をくいくい引っ張った。彼も大きく頷いた。 「なら良いけど」  そんな話をしていると、インターホンが再び鳴った。首をかしげながら、インターホンに立つ。 「……えっ!?」  驚いて、十和を見る。十和は首をかしげながら、インターホンの画面を見た。 「マジか」  そう言いながら、十和は勝手にインターホンで通話を繋げる。 「早すぎだろ」  その先にいたのは樹里ちゃんだった。しかも、たまたま一緒に入ってきた人がいたらしく、エントランスではなく、玄関の先にいる。 「邪魔しちゃった?」 「いや、そういうわけじゃないけど、今は困る」  十和の声なのをわかって、樹里ちゃんは会話する。 「困るって何?」 「いや……」 「もういるんだから入れてよ。別に裸ってわけじゃないでしょ?」  ……樹里ちゃんは何を想像しているんだろう。十和はため息をつくと、百合果を見た。 「百合果、母さん入るけどいい?」 「いいよ」 「えっ!?」  十和は驚いている浜口先輩を放っておいて、おずおずと玄関へ行く。浜口先輩は立ち上がって、別にフォーマルな服を着ているわけではないのに、身だしなみを整えている。 「2人が裸だったらどうしようかと思った」 「やめろよ。変な想像すんの」  30分前まで、その寸前だったことは間違っても言えない。
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