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「面倒だから学校で俺の妹と付き合ってるって言うなよ」
「重々承知してます」
浜口先輩は深々と頭を下げた。けれども、決して重たい空気ではなく、どちらかというと大袈裟にコミカルにやっている感じだ。十和もそれをわかってか、呑気にお茶を飲んでいる。
「お前はちゃんと受験に向けて勉強してるんだろうな?」
「もっちろーん。来週は仮内申前最後のテストだから、死に物狂いで勉強してる」
勉強とは何も関係ないのに、百合果は腕を曲げて力瘤を見せてきた。
「……あ、そう。じゃあ、今まで何してたんだよ」
「勉強教えてもらってた!! 遊んでないもん!!」
百合果はムッとすると、浜口先輩の袖をくいくい引っ張った。彼も大きく頷いた。
「なら良いけど」
そんな話をしていると、インターホンが再び鳴った。首をかしげながら、インターホンに立つ。
「……えっ!?」
驚いて、十和を見る。十和は首をかしげながら、インターホンの画面を見た。
「マジか」
そう言いながら、十和は勝手にインターホンで通話を繋げる。
「早すぎだろ」
その先にいたのは樹里ちゃんだった。しかも、たまたま一緒に入ってきた人がいたらしく、エントランスではなく、玄関の先にいる。
「邪魔しちゃった?」
「いや、そういうわけじゃないけど、今は困る」
十和の声なのをわかって、樹里ちゃんは会話する。
「困るって何?」
「いや……」
「もういるんだから入れてよ。別に裸ってわけじゃないでしょ?」
……樹里ちゃんは何を想像しているんだろう。十和はため息をつくと、百合果を見た。
「百合果、母さん入るけどいい?」
「いいよ」
「えっ!?」
十和は驚いている浜口先輩を放っておいて、おずおずと玄関へ行く。浜口先輩は立ち上がって、別にフォーマルな服を着ているわけではないのに、身だしなみを整えている。
「2人が裸だったらどうしようかと思った」
「やめろよ。変な想像すんの」
30分前まで、その寸前だったことは間違っても言えない。
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